44%速くなったのに、Astraは遅い。僕が気づいた「AIの速さ」の落とし穴

2026年10月、ChatGPTのGPT-6が速くなったというニュースが流れてきた。OpenAIの発表では、ウェブ検索が必要な質問で、回答を始めるまでの時間が平均44%短縮されたという。
ところが、そのニュースを見た頃、僕はGPT-6 Astraを使いながら、まったく別のことを言っていた。「めちゃくちゃ遅いwww」。さらに、思わず「今、返信に何秒かかった?」と聞いた。
笑い話のようだけれど、ここにはAI製品の発表を読むときの大事な落とし穴がある。速くなったという数字と、僕が遅いと感じた体験は、そもそも同じものを測っていたのだろうか。
44%は「回答を終える速さ」ではなかった
OpenAIが2026年10月7日に公表した比較は、GPT-6 InstantとGPT-5.6 Instantの話だ。しかも対象はウェブ検索が必要な質問であり、測定点は「回答を開始するまで」。1つの仕事の終了時間でも、長い回答をすべて出し終える時間でもない。
たとえば5秒待って文章が出始め、その後さらに40秒続く回答と、8秒待ってから10秒で完結する回答を考えてみる。前者の方が最初の反応は早くても、全文を読み終えるまでの時間は後者の方が短い。これは説明のための架空の秒数で、GPT-6の実測値ではない。
だから「44%速い」は「どのChatGPTでも、どんな仕事でも、待ち時間が44%減る」という意味にはならない。
僕が使っていたのは、そもそもInstantではなかった
もう1つ重要なのは、僕が遅いと感じた相手がAstraだったことだ。発表にあるInstantとは、モデルの設定も役割も違う。
OpenAIのリリースノートでは、Intelligent UIの対象はInstantからExtra Highまで。Pro向けの推論設定であるAstraは引き続き提供されるが、このIntelligent UIには対応しないと説明されている。さらに同日の更新はChat向けで、WorkとCodexを動かすモデルが一緒に切り替わるわけでもない。
ここでAstraが遅い理由を「重い推論だから」と決めつけることもできない。モデルの選択、課題、負荷、画面での待ち時間がどう影響したか、僕の発言だけでは分からない。そもそもあの日はストップウォッチで測っていなかった。
「返事が来た」と「仕事が終わった」の間がいちばん長い
僕はChatGPTに質問だけでなく、営業候補の調査、商品情報の確認、記事の整備、Wixの公開作業なども任せている。そこで欲しいのは、最初の一文字が出ることより、「確認した結果が使える状態になること」だ。
以前、AIが大量の仕事を進め、専門的な文書が次々に出てきたとき、僕は「本人すら意味不明で読んでないけど、仕事は進んでる」と笑った。これはAIの能力を褒めるだけの話ではない。出力が増えるほど、結果を見届ける人間の時間が別の問題として残る。
最初の反応までの時間、全文や処理が終わるまでの時間、そして結果を確かめて次へ進めるまでの時間。AIを毎日の仕事に使っていると、この3つは同じではないと感じる。
文章が少し早く始まっても、最後の確認で何度も手戻りすれば、僕の1日は短くならない。一方、途中から読めることにより、完成前に前提の誤りに気づけるなら、ストリーミングの速さには別の価値がある。
作業が終わるまでの時間と、人間が拘束される時間は同じではありません。この区別を整理したKnowledge:AI自動化は「処理時間」より「人間の拘束時間」を減らす もあわせて確認できます。
「早く喋るAI」と「仕事を早く進めるAI」は別かもしれない
今回の公式発表で僕が見直したのは、モデルの速い・遅いという評価の仕方だった。44%という数字自体を疑うのではなく、何と何を、どの時点で比較した数字なのかを聞く必要がある。
自分の作業なら、同じ依頼を同じ条件で実行し、回答開始・最後の出力・成果物の確認完了を別々に記録すれば、初めて比べられる。まだそこまでの計測はしていない。今回は数字の実験結果ではなく、2026年10月に感じた違和感と公式発表を突き合わせた記録だ。
速いAIがほしい。もちろんそうだ。でも、本当に短くしてほしいのは、待っている秒数だけではない。僕が次のことを始められるまでの時間なのだと思う。
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この記事を書いた人
可児波起(かに なみき)。マーケティングデザイン、DX支援、AIを使った実務運用に取り組む。体験と調査を分けながら記録している。




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