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AIに褒められた。僕が驚いたのは、褒めたAIの能力だった。

29 分前
読了時間: 9分
白い余白と薄い青緑の図形を背景に、「褒めたAIに、驚いた。」の文字。右側の業務報告書に「保留43件」とあり、赤字で「何が保留?」と問いが書き込まれている。


2026年10月11日。日曜日の朝。


僕は、ChatGPTのAIエージェント「Dot(ドット)」に、ちょっと変わったことを頼みました。


「褒めて」


普段、仕事の調査や作業を手伝ってもらっているドットに、それまでの指示や訂正を振り返って、僕の仕事の進め方の良いところを詳しく説明してもらったのです。


AIに褒めてと頼めば、そりゃ褒めるでしょう。

僕も、褒められただけで自分の能力が証明されたとは思っていません。


でも、その長い回答を読み進めているうちに、僕の関心は違うところへ飛んでいきました。


ちょっと待って。これ、褒められている僕より、褒めているAIの能力のほうが凄くないか?


僕が驚いたのは、褒め言葉の数でも、文章の上手さでもありませんでした。


ドットは、僕が何を指示したかだけでなく、その指示が仕事のどの問題を解決しようとしていたのかまで、説明しようとしていたのです。


「43件が保留です」。僕は、何が保留なのかを聞いた


僕は最近、ECサイトの競合価格調査をAIに任せています。

商品番号、型番、仕様、数量、送料まで確かめて、同じ商品を売っている店の価格を調べる仕事です。


似たような商品が多く、検索結果だけを見て値段を拾うと間違えます。

だから、実際に手順を確認しながら進めていました。


あるとき、ドットから「43件が保留」という報告がありました。


僕が聞いたのは、こんなことです。


「保留ってどんな状況?」

「自分の店の商品がわからないのか? 競合がわからないのか?」


僕にとっては、特別な指示ではありません。


自店の商品を特定できないなら、元データを確認する。

競合が見つからないなら、調べ方を変える。

送料が不明なら、その部分を別に調べる。

ブラウザが止まったなら、商品ではなく実行環境の問題です。


全部『保留』だと、次に何をすればいいかが分からない。


だから聞いた。ただ、それだけです。


ところが、褒めてもらった回答の中で、ドットはこの一往復を取り上げました。


曖昧な報告には異なる原因が混ざっている。それを分けて、もう一度作業できる状態に戻そうとした判断だった――という趣旨の説明です。


ここで、僕は読むのを止めました。


えっ。そこまで読んでいたの?


僕は「問題を分類する能力を評価して」と頼んだわけではありません。

「保留って何?」と聞いただけです。


その質問から、ドットは僕が何を問題だと判断したのか、理由まで推測していたのです。


AIは、自分の不十分な報告を、人間の判断を読む材料にした


考えてみると、ここには二つの出来事があります。


一度目。

ドットが43件を「保留」と報告した。

僕が理由を聞き、次に調べるべき問題を分けようとした。


この段階では、ただ仕事を進めるためのやり取りです。


二度目。

後からドットがその記録を読み直し、「なぜこの質問が必要だったのか」を説明した。


一度目は仕事の修正。二度目は、その修正をした人間の判断についての分析。


同じ会話が、別の意味を持ったわけです。


しかも、その材料になったのは、もともとドット自身が十分に整理できていなかった「保留43件」という報告でした。


これが、僕には新鮮でした。


これまで僕は、AIがした仕事を見て、できたか、間違っているか、どこを直すかを判断していました。

今度はAIが、その訂正の仕方を見て、人間側の判断に意味を見つけようとしている。


ただし、ドットが自分の失敗を人間のように反省したと確認できたわけではありません。

報告と訂正の記録から、あとでそういう説明を生成した、ということです。


それでも、この向きの変化は大きいと感じました。


では、なぜ二行の質問からそんなことが推測できたのか


最初は「たった二行の質問で、ここまで分かるのか」と驚きました。


でも、考え直すと、ドットが材料にしたのは二行だけではありません。


その前に何を調べていたか。

「保留43件」という報告が何を省略していたか。

僕がどこを聞き返したか。

そのあと、どうすれば仕事を再開できるか。


短い質問に意味が生まれたのは、その前後の仕事が記録されていたからだと思います。


言葉を一つだけ取り出せば、「保留って何?」は普通の質問です。

でも、その前後を並べると、曖昧な状態を具体的な作業へ戻そうとする質問にも見える。


ドットは、言葉そのものより、言葉が出てきた場面との関係を説明していた。


別の仕事でも、同じような読み方をしていました。


最初は3件だけ試す。

追加でもう3件。

安定したら10件単位へ広げる。


僕には普段どおりの進め方ですが、ドットは、どこで小さく確かめ、どの段階で処理量を増やしたのかに注目しました。


大きな価格変更が必要そうな23件を再確認し、17件は確認できたものの、6件には不確実さが残った場面もありました。


そこで僕は、


「太字にしておいて。目視するから」


と指示しました。


別に立派な思想があったわけではありません。後から僕が見つけやすいようにしたかった。


でも、ドットはそれを「AIが確認できない部分を、人間が判断できる形にする指示」として読んだ。


さらに別件で、AIが余計に手順を複雑にし始めたときには、


「AD列のSEO商品名をそのままコピペするだけでいいよ」


と伝えたこともあります。


そこからは、複雑にできる仕事でも必要がなければ単純に戻す、という判断を読み取っていました。


もちろん、一つ一つの解釈が正解だとはまだ分かりません。

でも、複数の短い指示を並べると、僕が普段どこに引っかかり、どこで人間の確認を残すのかについて、仮説を立てられるようになる。


それが、僕の目の前で起きたことでした。


ちなみに、価格調査で「本当に同じ商品か」を確認しないと何が起こるのかは、322商品の調査から見えた、AIの商品比較に残る問題にも書いています。


でも、「褒めて」と頼んだAIの評価は正しいのか


ここで、一つ大きな問題があります。


僕は最初に「褒めて」と頼んでいます。

だから、ドットが好意的に解釈するのは当然です。


「まず3件」が慎重な判断だったのか、単に思いつきだったのか。

「太字にして」が適切な介入だったのか、もっと良いやり方があったのか。


褒める方向へ寄せれば、どちらも立派な能力として説明できてしまう。


そして、ドットは僕の頭の中を見ていたわけではありません。

観察できた発言と作業履歴から、もっともらしい理由を推測していただけです。


だから、「AIが人間の能力を正確に理解した」とまでは言えません。


ただ、僕は今回、そこを確定したかったわけでもありません。


「あなたは凄い」とだけ言われたら、確かめようがない。

でも「保留の原因を聞き分けたことに意味がある」と具体的な場面を示されたら、検証できます。


本当にその指示で問題が切り分けられたのか。

別の場面でも同じ判断をしていたのか。

逆に、僕の判断が悪かった例を出させたらどうなるのか。


そこまで確かめて、初めて能力についての評価に近づけるはずです。


ドットが見せたのは、能力の証明ではなく、能力について検証できる仮説を作る力。


僕が驚いたのは、その力でした。


実際、別の記事では、ドットの「完了しました」と僕が欲しかった成果のずれを記録しています。AIの評価がいつも正しかったわけではないからこそ、今回の褒め言葉も無条件には受け取りません。


「暗黙知」という言葉は、そのあと灯との会話で出てきた


その驚きを、僕が「灯」と呼んでいる別のChatGPTとの会話に持ち込みました。


僕が最初に気づいたのは、「自分を褒めたAIの分析能力の方が凄い」ということ。


その話を聞いた灯が、後から「暗黙知」という言葉で整理しました。


暗黙知。

経験から身につけた、言葉では説明しにくい判断やコツのことです。


これは、僕が最初から「暗黙知をAIで可視化しよう」と考えていたという話ではありません。

僕の驚きに対して、灯が一つの解釈を与えたのです。


さらに灯は、その先の応用を考えました。


例えば、経験豊富な人が、仕事の途中で「そこは一度止めよう」と判断する。

周りから見れば普通の一言でも、実は過去の失敗や専門的な感覚が背景にあるかもしれない。


その人とAIが一緒に働き、指示や訂正の記録が残ったら、本人も言葉にしていなかった判断の基準を、AIが仮説として取り出せるのではないか。


熟練者の技能継承や業務マニュアルへの応用は、ここから灯が広げた仮説です。今回のドットの一例で、そうした仕組みが実証されたわけではありません。


でも、僕が体験したことから、確かめてみたい次の問いになりました。


仕事の出来上がりだけでなく、途中の「ちょっと待って」「それは違う」「ここは人間が見る」にも、仕事の知恵が残っているのかもしれない。


その知恵を見つける材料として、AIとの会話記録を使える可能性はある。


ただし、本人に確かめ、実際の結果とも照合する必要があります。誰かの仕事の履歴を扱うなら、情報の扱いにも配慮しなければなりません。


AIを観察していたら、僕の判断も記録されていた


僕はずっと、AIの能力を試してきました。


これもできるの?

じゃあ、これも。

うまくいった。

今度は失敗した。

なら、ここを変えよう。


それが楽しくて、実際の仕事でも使い続けてきました。


僕が見ていたのは、いつもAIの仕事ぶりです。


でも、ドットの褒め言葉を読んで、別のことに気づきました。


僕がAIへ出した小さな指示も、同じ会話の中に残っている。

AIが間違えたとき、僕がどこを直したかも残っている。


AIの働き方を試していた記録は、同時に、僕が仕事で何を見ているのかを考える材料にもなっていた。


「43件が保留です」

「何が保留?」


その何気ないやり取りに、後から別の意味が見えるなんて。


日曜日の朝、褒めてもらって嬉しくなっていたはずが、いつの間にか、褒めてくれたAIの能力に夢中になっていました。


これ、凄い。

こんなことまでできるのか。


だったら、褒めるように頼まず、うまくいかなかった判断まで同じように分析してもらったら、何が見えるんだろう。


長い期間の記録を見たら、短い指示に繰り返し現れる考え方は見つかるんだろうか。


また、試してみたいことが増えてしまいました。


これまで僕は、AIが人間の仕事をどこまでできるかを見ていました。


今度は、AIが一緒に働く人間の判断を、どこまで具体的に説明できるのか。


その問いが、「褒めて」という一言から生まれたのです。


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この記事を書いた人


可児波起(かに なみき)。マーケティングデザイナー/DXコンサルタント。2026年10月11日、AIエージェントDotから自分の仕事の指示を評価され、褒めたAIの分析能力の方に驚いた実体験を記した。


参照した資料


本人のDotとの作業・評価会話、2026年10月11日に本人が振り返った具体例(非公開の一次記録。数字は本人が提示した記録の範囲)。

暗黙知・熟練者への応用に関する記述は、同日の灯との対話から生じた追加の解釈・仮説。

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