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SNS規制は「投稿内容」から「使わせ方」へ?TikTok・Metaの依存的デザイン規制を読む【2026年版】

1 日前
読了時間: 9分

更新日:21 時間前

無限スクロールを示す記号と停止ボタンをスマートフォンの中に置き、「終われる設計?」と問いかけるSNS依存的デザイン規制のBlog画像

 

無限スクロール。自動再生。プッシュ通知。自分向けに最適化されたレコメンド。

これまでSNSでは、「見たいものを探す手間を減らす」「ユーザー体験をよくする」「離脱を減らす」ための機能として磨かれてきました。

ところが2026年、同じ機能名がそのまま規制当局や司法当局の資料に並び始めています。

2月、EU欧州委員会はTikTokについて、無限スクロール、自動再生、プッシュ通知、高度にパーソナライズされた推薦などを含む「addictive design(依存的デザイン)」がDigital Services Act(DSA)に違反しているとの暫定見解を公表しました。7月にはInstagramとFacebookについても、ほぼ同じ設計要素を問題視しています。

さらに8月、米国ではMetaと51の司法長官による和解案に、未成年の利用時間制限、夜間利用のブロック、通知制限、年齢確認、いいね数の非表示、非パーソナライズフィードなどが盛り込まれました。9月25日のAlabama州とTikTokの和解でも、2時間の利用制限、連続利用時の休止、夜間制限、非パーソナライズフィードなど、UIと利用時間の設計そのものが対象になっています。

2026年の変化は、「何を投稿したか」だけではなく、「ユーザーをどれだけ長く使わせるよう設計したか」まで規制の対象になり始めたことです。

 

2月のTikTokで、EUが問題にしたのは投稿内容ではなかった

 

2026年2月6日、欧州委員会はTikTokについてDSA違反の暫定見解を公表しました。

対象として挙げられたのは、無限スクロール、自動再生、プッシュ通知、高度にパーソナライズされた推薦システムです。

欧州委員会は、TikTokがこれらの設計による利用者の身体的・精神的なウェルビーイングへのリスクを十分に評価・緩和していないと暫定的に判断しています。特に未成年者や脆弱な利用者への影響を問題視しました。

ただしこれは最終判断ではありません。TikTokには反論や資料提出の機会があり、ReutersによるとTikTokは暫定見解に反論しています。

重要なのは、EUの文書で「違法コンテンツを消したか」ではなく、「スクロールを終わりにくくする製品設計」が中心論点になったことです。

 

5カ月後、ほぼ同じ論点がMetaにも向かった

 

もし2月だけを見れば、「TikTok固有の問題」と読めたかもしれません。

しかし7月10日、欧州委員会はInstagramとFacebookについても、依存的デザインがDSAに違反しているとの暫定見解を公表しました。

ここでも挙げられたのは、無限スクロール、自動再生、プッシュ通知、高度にパーソナライズされた推薦です。

Metaは既存のティーン向け安全機能や利用時間管理策を挙げて反論しています。EU側は、それらの緩和策ではリスクへ十分対応できていないとの暫定評価です。

同じ設計論点がTikTokからMetaへ広がったことで、問題は一社固有というより、広告型SNSに共通するプロダクト設計の問題として見えやすくなりました。

 

米国では、和解条件が「アプリの使わせ方」に直接入った

 

EUのDSA手続きと、米国の訴訟・和解は同じ制度ではありません。

それでも、2026年夏から秋の米国の動きを見ると、規制・司法の焦点がプロダクト設計へ向いていることが分かります。

8月26日、California州司法長官は、Metaと51の司法長官による和解案を発表しました。これは裁判所の承認が必要な提案であり、Metaの法的責任を最終判決で認定したものではありません。

和解案には、18歳未満への1日2時間のデフォルト利用制限、深夜0時から午前6時までの夜間ブロック、夜間・学校時間帯の通知停止、年齢確認、未成年へのいいね数表示の禁止、美容整形系フィルターの禁止、非パーソナライズフィードを選べる仕組みなどが入っています。

裁判の争点が投稿内容だけなら、利用時間や通知、フィード設計まで和解条件に入る必要はありません。

 

9月のTikTok和解では「休ませるUI」まで義務になった

 

9月25日、Alabama州司法長官はTikTokとの和解を発表しました。

TikTokは、未成年へ1日2時間の利用制限を設け、15分連続利用した時点、その後60分・90分の時点で「productive pauses」と呼ばれる休止を入れることになっています。

深夜0時から午前6時の利用制限、夜間・学校時間帯の通知制限、年齢確認、未成年への美容フィルター禁止、デフォルトの非パーソナライズフィードも含まれます。

これはAlabama州の訴訟を解決する和解であり、TikTokの設計が精神疾患を引き起こしたと裁判所が最終認定した、という意味ではありません。

それでも「もっと長く使ってもらうUI」だけでなく、「途中でやめられるUI」をサービス側へ求める方向が明確になっています。

 

そもそも、無限スクロールやレコメンドはなぜ作られたのか

 

無限スクロールやレコメンドそのものを悪い機能と決めると、今回の変化を読み違えます。

投稿が膨大にあるサービスでは、利用者が一件ずつ検索して探すより、興味に合いそうな投稿を自動で出した方が便利です。

自動再生も、次の動画を毎回タップする手間を減らします。通知は、友人からの反応や必要な更新を見逃さないためにも使われます。

問題は機能の存在ではなく、その機能が最終的に何の数字を最大化するよう調整されているかです。

 

広告モデルでは「長く使う」が企業価値になりやすい

 

広告で収益を得るSNSでは、ユーザーがサービスへ戻り、長く滞在し、多くの画面を見るほど広告を表示できる機会が増えます。

そのためプロダクト改善では、セッション時間、再訪率、離脱率、通知からの復帰、動画視聴継続などが重要な指標になります。

もちろん、企業がこれらの数字を見ること自体が違法という話ではありません。

ただ、特定のKPIを上げ続けると、利用者が「十分だから終わる」瞬間と企業側の最適化目標が衝突する場合があります。

2026年の規制動向が突きつけているのは、「エンゲージメントが高いほど良い」という前提にも上限があるのではないか、という問題です。

 

家庭が負ってきた「やめる責任」の一部を、サービス設計へ戻す

 

これまでSNSの使いすぎへの対策は、利用者本人や家庭側の自己管理として扱われることが多くありました。

スマホを置く。通知を切る。親が利用時間を決める。夜は使わせない。

2026年の米国和解では、その一部をサービスのデフォルト設定へ戻しています。

利用時間の上限を最初から設定する。夜間は使えなくする。通知を止める。年齢を確認する。パーソナライズを弱める。

「使いすぎないよう自分で気をつける」だけではなく、「サービス側も、離れられるよう設計する」という責任分担へ変わっています。

 

マーケターとして見ると、KPIの意味が少し変わる

 

僕がこのニュースで気になるのは、SNS企業だけの問題ではありません。

Webやアプリの改善では、CTR、滞在時間、リテンション、再訪率、開封率などを上げることを普通に目標にします。

数字自体は必要です。

でも、その数字を上げるために利用者へどんな行動を促しているかまで見ないと、KPIだけが独立して目的化します。

「この施策で滞在時間が20%伸びた」だけではなく、「なぜ伸びたのか」「利用者が自分の意思で終えられる設計か」まで見る。

これはSNS以外でも、通知、サブスクリプション、EC、ゲーム、ニュースアプリなどに使える視点です。

 

推薦アルゴリズムは「悪者」ではない

 

ここはかなり重要です。

推薦アルゴリズムがあるから、知らなかった音楽、商品、ニュース、クリエイターに出会えることもあります。

推薦がなくなれば、巨大なSNSから自分に必要な情報を探すコストは上がります。

今回のEU資料も、「レコメンドを全面禁止せよ」と単純に言っているわけではありません。

問題にしているのは、依存的な利用を生み得る設計リスクを十分評価し、効果的に緩和しているかです。

便利さと、自分で終われること。この二つを同時に成立させるのが次のプロダクト設計課題になります。

 

規制が入ったから、健康改善が証明されたわけではない

 

今回のニュースは、効果についても慎重に読む必要があります。

EUのTikTok・Meta判断はいずれも2026年10月2日時点では暫定見解です。

米国のMeta案件は和解案で、裁判所の承認が必要です。TikTokのAlabama案件も和解であり、すべての主張について裁判所が事実認定した判決ではありません。

また、1日2時間制限や夜間ブロックを導入すれば、若年利用者の健康状態がどの程度改善するかは、今回の資料だけでは分かりません。

確認できたのは「規制・司法の介入先がプロダクト設計へ広がっていること」であって、「どの設計変更がどの健康効果を生むか」までは別の検証課題です。

 

次にSNSの新機能を見るとき、僕なら「何を最大化する機能か」を見る

 

新しいSNS機能が出たとき、「便利」「AI搭載」「おすすめ精度が上がった」だけで評価しない方が分かりやすくなります。

その機能は、何を増やすために作られているのか。

投稿数なのか。視聴時間なのか。再訪なのか。購入なのか。友人とのやり取りなのか。

その数字が増えたとき、企業以外にコストを負う人はいないか。

そして利用者が「もう十分」と思ったとき、簡単に離れられるか。

プロダクトを見るとき、機能ではなく「最適化目標」を見る。

2026年のTikTokとMetaをめぐる規制は、その見方をかなり分かりやすく示しています。

 

結論:SNS規制は「何を見せたか」だけでなく「どう使わせたか」へ広がっている

 

2026年2月のTikTok、7月のInstagram・Facebookに対するEUの暫定見解では、無限スクロール、自動再生、通知、パーソナライズ推薦などの設計が直接問題になりました。

8月のMeta和解案と9月のTikTok・Alabama和解でも、利用時間、夜間利用、通知、年齢確認、フィードのパーソナライズといった製品仕様が条件に入っています。

制度も法的手続きも異なるため、すべてを一つの「世界共通規制」とまとめることはできません。

それでも共通して見えるのは、SNSへの介入が「悪い投稿を消す」だけではなく、「ユーザー行動を何へ最適化する製品なのか」まで広がったことです。

SNSを見るとき、これからは投稿内容だけではなく、その下にある設計とKPIもニュースになります。

 

 

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この記事を書いた人

 

マーケティングデザイナー/DXコンサルタント/音楽家。企業・自治体等60社以上のマーケティング・DX支援に携わり、生成AI・Web・EC・データ活用などを実務で検証・発信しています。

 

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